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町家コラム

古家「楽」暮し!藤氏晴嵐「温故”致”新」

もう一つの京の名優、古家
近代の大規模な戦災を免れ、古き甍連なる古都として人々を魅了してきた京都。しかし、戦後高度成長期や、続くバブル経済期等の開発は、そんな京都に確かな変貌を齎した。大路を中心として立ち並ぶビルディングやマンション。もはや一地方都市と変わらぬその街様に、失望や焦燥を感じた人も内外共に多かろう。

確かに、市中心部等には未だ古い町家等が見られる。しかし、富裕商家等が建てた明治以前の本宅様豪奢物件のみが「有価」の建築として保護され、それ以外の多くの木造古家が顧みられることなく順次撤去待ちの如き有様である。良材や高等技術を結集した良家を保護するのは歓迎すべきことである。しかし、それ以外の古家には価値がないのであろうか。

殆どが、大正から昭和初期までの所謂、戦前築である「それ以外」の古家にも、前者より簡略とはいえ、同じ木造土塗りの工法が採られている。国産の、確かな梁柱や無垢材が用いられ、借家といえども床には銘木が使われていることも少なくない。つまり、地味な存在といえども合板やビニール壁等の廉価材を多用した後代の一般住居より「素性」が良いものなのである。そして、格子戸や型ガラス等に飾られたその表姿も、良家や社寺との調和を醸している。

元来、街様とは傑出した建造物等の「点」のみがなすのではなく、それら多くの建造物を含めた「面」がなすものであり、街のイメージ、転じて魅力とは、そうした空間的要素が大きな要因となって高められる筈であろう。

古家ある街並とそこでの暮し、現代の可能性
しかし、古い時代の工法、設計思想により成されているのなら、現代の生活とは合わず、やはり住み難いのではないか……。確かにこの疑問は、古家が破壊、またはそれに近い改修を受ける動機の一つとなっている。だが、現代であるからこそ、この問題の克服に近付くことが出来るとも言えまいか。

近年の技術革新は、より安全で高効率の機器や製品を生み、進む大量生産の海外シフトは、それらを安価で供給することを可能にした。「電気絨毯が町家の冬暮しに有効」との調査結果等はその一例と言えよう。また、「克服」とまで行かずとも、「理想に近付けるようにする」といった視点も重要であろう。譲れない問題は知恵や技術製品で対処し、あとの少々は我慢し、暮しの風情を楽しむという「気構え」である。こうした、気構えと知恵、技術品の柔軟な混用こそが、新旧の暮しを繋げ、延いては古家ある街並を維持することにも繋がるのではなかろうか。

そして、今「温故“致”新」の始め
私は現在、左京区内にある築80年に近い昭和初期建造の古家に住んでいる。無論、保存対象とは無縁の小借家であるが、玄関土間から炊事場の一線横に小部屋が並ぶ、京町家伝統の「続き間」形式を有している。

幾度かの改修により土壁等は隠蔽されているが、塗柱や木製建具に型ガラス、そしてそれらが生む陰影等が良き風情を感じさせ、何より、今の賃貸住居とは異なる設計思想による造りが、各所に「余裕」を生み、住みやすさを供してくれている。浴室の不備や、厠が外に在る等、古式故の問題もあるが、それらの欠点を相殺させる「暮らす喜び宿る」空間がそこにはある。

そんな、不便はあるも魅力多い古家暮しを、より快適に、そして楽しくする為の細やかな工夫・試みを、我が家でも始めてみたいと思う。

尚、それらを行うに際して、次の各点に留意することとした。

1 極力金銭を用いない(廃品・廃材等の積極利用)。
2 身近な道具を使用する。
3 安全性を考慮する。
4 耐久性を考慮する。
5 そして、万事気楽に行う(出来栄え等にあまり拘泥せず、無理をしない)。

1から4までの各項は、「再生」的行為とも言える古家暮しに相応しい、環境負荷への配慮からである。5は、この試みの目的である「快適」と「楽」を追求する為の大前提である。現代社会にありがちな、本末転倒の疲労状態への陥入を避け、古家が持つ「ゆとり」に倣う為である。

澄みわたる秋天の下、古きを温め、新しきを成す、「温故“致”新」を始めたい。新旧の暮しを繋げ、麗しい街、誇りある手業の継承を願って……。

平成丙戌年澄秋 于山州神丘麓  藤氏 晴嵐
とうじ・せいらん
京都賀茂河畔生れ。音楽活動、大陸放浪等を経て著述家に。伝説の現代文語文随筆「逍遥京都」(2005.2-2006.2 京都新聞夕刊)の著者。著書に『西域逍遥記』等。現在左京にて古家暮しを実践。
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